2007年の活動報告とお礼

                      日本ウミガメ協議会 

 2007年も暮れようとしております。皆様のお陰で、今年も何とか活動を続けてこれたことに感謝いたしております。ここで簡単に今年の報告をさせていただきます。

  今年は神戸での活動にエネルギーを注ぎました。協議会に届く大阪湾や淡路島周辺の漂着死体の多さから、大阪湾や播磨灘の浅海域は動物食のアカウミガメの重要な餌場ではないかという考えを抱くようになりました。その海域は船の航行が激しく、また漁業活動の密度も非常に高いことから、この海域で事故死するのは容易に予想されます。また、徳島での近年の産卵回数の減少の一因もここにあるのではないかとも考えました。そこで、大阪湾や播磨灘で捕獲されたウミガメをいったん保護して、秋になって出て行く時期まで保護しようと考えました。野生のウミガメを捕獲して確保することは、まかり間違えば自然保護に逆行する行為です。その答えを市民に求めるべく、リバイブウミガメ会議なる会議を神戸市と淡路島の由良で行い、この保護活動を支持していただけることを確認しました。そこで、神戸市港総局や文化観光課の協力の下、神戸空港のラグーンに収容することになりました。結局、6個体のアカウミガメを保護し、12月8日に紀伊水道で放流しました。これらの個体が無事に本来の生活に復帰できたかは、人工衛星などで追跡したいと考えていますが実現していませんでした。

 この神戸空港の活動の背景には、前述したように徳島県での産卵の減少があります。徳島には蒲生田、日和佐という古くから記録の残る産卵地があります。この地域での産卵はかつては年数百回を超えていたのですが、ここ数年20回を下回っているのです。この原因を探ろうと試みているのが、北海道大学から預かっている重田麻衣です。重田は昨年より日和佐のうみがめ博物館に残されたデータを分析し、日和佐で産卵したウミガメは他の場所に比べて再度日和佐に戻ってくることが少ないことがわかりました。その原因で最も可能性があるのが事故死なのです。大阪湾もその危険な水域の一つかも知れないと考えたのです。協議会では他にも三重県南部の幾つかの中層定置網で調査を実施しており、それによって事故死するウミガメが多いことが、石原孝によって明らかにされつつあります。また、日立環境財団の助成などを受けて、石原を中心に混獲防止の研究にも着手しました。

 和歌山県南部(みなべ)の千里海岸では、理事の後藤清氏を手伝う形で松沢慶将が産卵調査を実施しました。この地も砂の侵食が激しく、その結果、台風などの高波による卵の流出が顕著になっており、今後の推移が気にかかるところです。また、この地においては見学者が増加しており、そのコントロールを如何にするかが今後の課題です。

 高知県室戸基地の調査活動は胸を張れるものではありません。せっかく椎名診療所を基地として借りているにも関わらず有効利用されていません。理由は人材です。これまでは、戎井(山崎)千亜希が常駐し、岩本太志(現、三井生命)や石原孝が時々行って調査を行う体制を整えていました。しかし、山崎の結婚・出産を機に、調査から離れ、その穴埋めが出来ていないのが現状です。もちろん、人件費があれば解消することですが、月のバイト代が4万円では山崎の後継者がいないのも当然かもしれません。ただ、室戸の混獲個体の推移と産卵回数の推移がどのように連動するかを調べることは、北太平洋のアカウミガメの個体群サイズを評価するうえで重要なので、是非とも継続したいと考えています。

 

 2年前より実施しているアオウミガメの生態調査は、三井物産環境基金の助成金のお陰もあり、徐々に軌道に乗り始めています。黒島研究所での八重山生息個体の調査、鹿児島大学理学部大学院生武内有加さんとの鹿児島野間池基地での混獲個体の調査、高知室戸基地での混獲個体の調査、三重県島勝基地での混獲個体の調査結果、そして全国から寄せられる漂着死体の情報は、近い将来、日本沿岸のアオウミガメの生態を浮き出しにしてくれることでしょう。来年、亀崎の学生になる島田貴裕は、それらのデータを総合するとともにオーストラリアのデータとも比較し、アオウミガメの生態解明に挑戦します。

 全国の産卵状況、漂着死体、標識個体の再捕獲の収集は谷口真理が行いました。今年の全国のアカウミガメの上陸・産卵はそれぞれ6442回と3668回、アオウミガメの上陸・産卵はそれぞれ2730回と2562回、タイマイの上陸・産卵はそれぞれ17回と11回でした。日本のアカウミガメの産卵は昨年大きく減少しましたが、今年はやや回復したものの、昨年と大きな変化はありませんでした。アオウミガメは小笠原において順調に回復していることが小笠原海洋センターによって明らかにされています。これらの膨大なデータは、さらなる分析を行う必要がありますが、それを行う人力がないのも問題です。今年のデータは昨年に引き続き谷口真理が常人以上の努力によって行いました。

 日本ウミガメ会議は第18回会議を種子島で行いました。恒例の初日夜の公開シンポジウムは、NHK鹿児島の環境イベントもかねて、「日本のうみがめはかごんまで守る」というタイトルで、鹿児島のウミガメ関係者の大部分が登壇者となり議論され、鹿児島のウミガメを巡る現状を総括することができました。また、参加者の発表内容も議論も充実しており、また、今年もウミガメに関する知見も深まり、招待講演者のリンパス博士からも高く評価していただきました。林哲郎さんほか種子島の皆さんには大変良くしていただきました。ここに御礼申し上げます。

 国際的な活動としては、2月にアメリカ、マートンビーチで開催された第27回国際ウミガメ学会に亀崎、松沢、石原が参加し、松沢はポスター発表、石原は口頭発表を行いました。また、同学会の理事である亀崎は8月にワシントンで行われた理事会にも参加しました。また、北太平洋のアカウミガメの保護に関して、アメリカ・メキシコとで共同プロジェクトを実施していますが、その一環として須田大輔さん他二人の漁師さんをメキシコ、ハワイにお連れして、漁業者をまじえた混獲防止の話し合いの場に参加しました。メキシコにおいてはサメを対象とした漁業の制限などで成果をみることができました。一方、モルジブ、ベトナムなどで継続してきた活動は、助成金を得ることが出来ずに発展させることができませんでした。

 

 教育活動としては、亀崎が東京大学大学院の客員准教授として大学院生の指導を行なったほか、北海道大学大学院の重田麻衣、明治大学の中島悠介、東海大学の田中宇輝を事務局で預かり、研究指導を行いました。また、この三名は当会の活動に積極的に参加し、支えていただきました。北海道大学大学院の池田隆美さん、九州大学大学院の浜端朋子さんには、それぞれアカウミガメの回遊データ、アオウミガメのDNA試料を提供し共同研究を行いました。また、南部基地、室戸基地や黒島研究所でも多くの学生の卒業研究、インターンシップの場を提供しました。松沢、水野、石原、島田は大阪コミュニケーションアート専門学校で教鞭もとりました。損保ジャパンインターンシップ生として大阪教育大学の関真理子さんを、文京学院大学からのインターンシップとして柳原さん河野さんを受け入れました。

 予算状況においては、2年前より国関係の委託事業がなくなり、活動予算が大きく減少しました。それに対応するため、寄付金やグッズ販売などに、その収入源をシフトさせようと事務局長の水野康次郎・中本真理子が先頭になって改革に着手しました。いくつかの企業等から様々な形で支援をしていただけるようになってきましたか、何分、営業に疎い集団なので順調に進んでいるとはいえません。収入を今後いかに確保するかが当会の存続を左右することは間違いありませんが、市民活動を支える日本の文化土壌は痩せています。市民やマスコミからの問い合わせは膨大でその対応にエネルギーを裂きます。大学からは卒論、修論などの学生を送ってきますが、学費の一部でこちらの経費をもつ話は一度たりともありません。とにかく、NPOというのは市民のために無償で働くべきとの意識が国民に広がってきました。一方で役人の天下り組織のようなNPOも垣間見ることができ、日本のNPO活動は岐路にたっていると感じています。NPOが競って本質的で行政が対応できない活動を行う、それに市民が気軽に寄付する、そんな理想的な社会が来てほしいと思います。

 来年もどうかよろしくご指導、ご支援をお願い申し上げます。

                                                       以上