ウミガメについて知りたい

ウミガメの教科書(上級編)

 

子ガメの分散

 

アオウミガメの幼体

 
 暗闇の中で脱出した子ガメたちは、仄かに海の方が明るいことを手がかりにして、一気に海へと向かいます。そして、海に入ってからは、波に逆らって泳ぎます。脱出してから約24時間だけは、休むことなく泳ぎ続けます。このような習性は、少しでも大型の捕食者が多い沿岸域からいち早く遠ざかり、保育場に運んでくれる海流に乗って生き残るために役立つと考えられています。
 
 また、ウミガメには地磁気の変化を感じる能力があるのですが、砂浜の上を進んだり、波に逆らって一定方向に進み続けたりする間に、その基準となる磁場が刷り込まれるのです。ウミガメは、生涯を通じて大洋を大回遊しますが、地磁気コンパスを積極的に活用しているとする証拠がたくさん見つかっています。したがって、子ガメが脱出してから海に入って行くまで間は、単に生まれた砂浜を後にして海へ旅立つというだけではなく、その個体の将来にまで深く影響する能力の獲得が行われる過程でもあるのです。