ウミガメについて知りたい

ウミガメの教科書(上級編)

 

発生

 ウミガメ類の卵はピンポン玉のような形をしていて、軽く圧すと凹んでしまいます。卵の大きさは種や地域や個体によって異なります。一番大きな卵を産むのはオサガメで、直径は51-55mmほどにもなります。ヒラタウミガメも、直径50-52mmの大きな卵を産みます。アオウミガメでは40-46mm、アカウミガメでは39-43mm、ヒメウミガメでは37-42mm、一番小さいのはタイマイの卵で、直径32-36mmです。
 
 羊皮紙状の卵殻は弾力に富んでいて、産卵時の衝撃に耐えられるようになっています。発生が進行すると卵殻の頂上付近から次第に白亜色になっていき、やがてそれは卵全体に及びます。このとき、胚は卵殻の内側に固着するので、一旦発生の始まった卵の天地を逆転したり、振動を加えたりすると、胚は死んでしまいます。
 
 卵から子ガメが無事に孵えるためには、環境条件も適切でなければなりません。温度は24℃から33℃の範囲を超えると極端に孵化率が低下します。産卵時には凹んでいた卵も、発生が進につれて卵は周囲の水分を吸収することで膨らんでいきます。もし周囲の砂が乾燥していたり、濃い塩分を含んでいたりすると、卵は水分を失い、胚は死んでしまいます。逆に、砂が水分を含みすぎているのも問題です。生きている胚は卵殻の小さな穴を通じて酸素を取り込み、二酸化炭素を排出しています。浜が水没して砂の隙間が水に浸かったままだと卵はガス交換ができなくなるので、胚は窒息してしまいます。
 

アカウミガメの発生過程


 胚の発生速度は、ほとんど温度によって決まり、温かければそれだけ早く成長します。一定温度にして発生の過程をたどると、孵化期間の40%くらいで、ようやく背甲ができてカメらしくなります。しかし、胚は1cmにも満たず、卵の大部分はまだ卵黄が占めています。その後、次第に色素が沈着したり、鱗板が形成されたり、四肢が伸張したりしながら、胚は全体的に成長していきます。孵化期間の80%ほどになると、胚と卵黄がほぼ同じ大きさなります。胚は卵の中で少し窮屈になり、以後、背中を丸め、腹甲を少し折り曲げながら成長してきます。やがて孵化間近になると、鼻先に卵角と呼ばれる小さなトゲができて、殻を突き破って孵化するために準備が整います。